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―銭谷さんの高校時代について、お聞かせください。
女子学院という私立の中高一貫校に通っていました。設立120年という歴史があるのですが、とても自由な校風の学校でした。私が入学する数年前に制服が廃止されましたし、大学並みの2期制で試験は年4回しかなく、前期と後期の間には秋休みまでありました(笑)。自主独立の精神があって、先生からは画一的なことは何も言われなかったですね。極論すれば、学校へ来て勉強していれば、あとは何をやっても各自の自己責任、といった雰囲気がありました。勉強だけではなく、歌がうまいとか、スポーツができるといった、それぞれの個性を尊重して評価する、というところもありましたね。
―素晴らしい学校ですね。
私が入学する前に、保護者に配られた冊子があって、そこに学院長の服装自由化に関する所信というものが書かれているんです。その中に、「服装を自由化して風紀が乱れることがあったとしても、それは学校の教育に大きな欠陥があることを示すに過ぎない、そのときは服装よりも教育のあり方そのものを反省すべきである」という一節がありました。私はこの冊子をつい最近、見つけて(笑)、それを読んで感動しました。
―生徒を信じ、その主体性を尊重しているんですね。
自分で自分を律する、というのは、ある意味、とても厳しいことだと思うんです。厳しい環境にいたということは、卒業してからわかりました。それが普通だと思っていましたからね。ずっとそういう教育を受けてきましたので、自分の中には「こうでなければならない」といったものはないんです。ですから、いま西京銀行でそれぞれの適性を見て適所に配置していこう、というのはまさにそういう感覚なんですね。
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部活はどういったことを。
絵を描くことが好きでしたので、美術部に入りました。文化祭のとき、校門のところにアーチを立てるんですが、私のデザインが採用されたことがありました。うれしかったですね。実は、女子美術大学の付属高校に入りたかったんですが、親から、そういう道はもう少し先に考えなさいと言われまして。いまは絵を描く時間は取れませんが、美術館にはよく行きます。勉強のほうでは、歴史、それも世界史が好きでした。世界の動きの中で日本を捉えてみるということが面白くて、それで国際関係論を専攻しようと大学を選びました。総じて、自然体でおとなしい生徒だったと思います。
―大学生活はいかがでしたか。
私立の女子高に6年間いましたので、大学ではカルチャーショックを受けました(笑)。国立の大学でしたから、地方出身の人も多かったんです。地方では塾が少ないこともあってか、高校が受験指導に熱心で、夏休みも毎日学校に行っていたと聞いてびっくりしたことを覚えています。学校が全部やってくれるのか、うらやましいな、と(笑) 。
―なるほど(笑)。ところで、銭谷さんは母親でもいらっしゃいますが、現在の教育現場に対するご意見を伺わせてください。
中学3年生と小学6年生の2人の子どもがいます。まず、すべての責任が学校にあるとは言えませんが、はっきり言って、学校は社会のニーズに全く追いついていないと感じています。例えば、義務教育で学ばなければいけないことが、私たちの頃より3分の1も減っている。教材は簡単になっていて、コアのことしか書かれてなく、説明がなくてかえってわからないものになっているんです。また、塾などで覚えてきた漢字を学校の授業で使おうとすると、先生から「それはまだ習っていないから使わない」と言われてしまう。子どもが好奇心を持って知りたいという知識欲を抱いたときに教えないと、伸びないと思うんです。そういうことが、何ごとにも興味を持てない子ども、というのを生み出しているのではないでしょうか。
―指導要領にしばられていると。
塾のほうがいい、と言うわけではありませんが、塾では先生は生徒の人気や成績、つまり授業の中味で評価されますよね。うちの子どもも、学校の先生と比べて、塾の先生は熱心で面白い、と言っています。成果主義的に評価されますから、勉強していて知識量もあるし、子どものいいところを引き出そうとするからでしょう。海外でインターンシップを経験してきた学校の先生が、外国でできることでも日本では難しい、と言っていました。海外では子どもの長所を伸ばす教育をするのに対し、日本では短所を補う教育をする、と。そういう環境になっているのだと思います
。
―銀行にしても、学校にしても、遅れていてなかなか変われないと指摘されているのはなぜだと思われますか。
何でも競争することがいいとは思えませんが、競争がないと浄化されていかないと思います。学校や銀行が遅れているのは、競争原理が働いていなかったからでしょう。銀行は長い間、護送船団行政で守られていましたから、そこに安住して国際競争に敗れてしまった。それがここのところ、外資系の攻勢にさらされて再編されてきていますよね。30年前ならいい制度でも、世の中は変わるので制度疲労が起こり、ひずみが生まれます。それを変えていく動きが、ようやくここ数年で起き始めていると思います。大学にしても、学部の新設や先生をヘッドハンティングしたり、AO入試を導入したりと改革が進んでいますね。それも、少子化による競争にさらされているからです。うちの子どもが受験するので、いろいろな学校の説明を聞きましたが、キャリア教育をしっかりやるとか、シラバスはこうなっているとか、きちんと説明をする学校には良い印象を持ちました。それができなければ生徒を集められない時代になっているのではないでしょうか。親としては、大事な時期の子どもを6年間も預けるわけですから、シビアに考えざるを得ないでしょう。
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銀行業界や産業界を変えていく活動はされていますが、教育を変えていくほうは、何かお考えですか
。
経済同友会に入りまして、いま、学校に企業人を派遣しようという試みを進めています。官庁は子ども向けの見学セミナーをやっていますし、外資系も夏休みに子どもを呼んで親が働く仕事現場を見せています。職業教育には、現場を見せることが第一だと思うんですね。子どもは全部をわからないまでも、何かを感じ取ることはできると思います。
卒業生が母校に行って自分の専門についての授業をする「課外授業ようこそ先輩」というNHKの番組があります。例えば落語家が落語を教えるんです。それを見ていたうちの子どもが、自分もこういう授業を受けてみたい、って言っていました。刺激を受けてイキイキしているんです。企業人も、総合的な学習の時間の一環でもいいので、何かお手伝いできるのではないか、と思っています。
私自身、前の会社にいるとき、週末に子どもをよく会社に連れて行きました。親は毎日、どういうところで仕事をし、どういう人とどんな話をしているのか、ということが実地でわかって、言葉で説明するよりはるかに効果的だったと思います。
―お子さんは銭谷さんについて何か言っていましたか。
家のママとは全然違う、と(笑)。子どもを持って仕事を続けることが大変なことだということがわかって、会社全体が女性も働きやすい風土にしていこう、という意識づくりを促進することにつながり、会社で働く女性にとっても良かったのではないかと思っています。
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どうもありがとうございました。 |